常務サマ。この恋、業務違反です
一応これって、初めてのお家訪問なんだけど……。
それなのに、こんな平然としていられたら!


高遠さんには全然深い意味は無さそうだし、邪な私が意識し過ぎなんだろうか。


妄想が無駄に空回っていくのを感じて、私は肩を落として息をした。


違う。高遠さんのこの様子じゃ、明らかに深い意味なんかない。


高遠さんは私に怪訝そうな瞳を向けている。


「どうかした?」


ほら。全然そんな気もない無邪気な瞳。
妙な期待にドキドキしてる私の方が、痛い人間のような気分になる。


「なんでもないです」


不埒な思考を見透かされたくなくて、私は窓の外に目を遣って顔を隠した。


私は高遠さんを心配して一緒に行くだけ。
そう自分に言い聞かせて、なんとか落ち着きを取り戻そうとした。


私の不謹慎な期待とは、きっと程遠い。


だから、ほんの少し。
少~しだけ、ガッカリした気分に陥りながら、私はずっと黙ったままでいた。
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