常務サマ。この恋、業務違反です
「なっ……! 冗談よして下さい!」


ハッと我に返って、声が引っくり返るのを感じながら、勢い良く背を向けた。
タチの悪い冗談に、ドキドキどころか、ドッドッと心臓が打ち鳴っている。


「あのな……。まさか本当に俺の行動を監視する為だけにここまで着いて来たのか?」


心底から呆れたような声が背中から聞こえる。


「えっ……」

「週末の夜に家に誘われた時点で、ある程度の覚悟はして欲しいもんだけど」


クスッと笑いながら、高遠さんは後ろからキュッと私を抱き締めた。


思わず息を飲んだ私の反応を確認しながら、高遠さんは私の髪を指先で梳いて、そのまま頬に滑らせて来る。
そんな仕草が妙に妖しくて、いつもの高遠さんらしくなくて、軽くパニックに陥りそうになった。


「だ、だって……。高遠さん、風邪気味で……」


自分を落ち着かせる為にも、顔を俯けたまま小さな声でそう聞いた。
は?と短い返事が返って来る。


「お気遣い、どうも。でも、大丈夫だって言ったろ?」


低い声でそう呟くと、高遠さんは肩越しに私を覗き込んで来た。
ものすごい至近距離に、それだけで身体がビクッと震えた。


「子供じゃないんだし。男の下心は察して欲しいもんだけどな」

「えっ?」

「……そういう反応されると、行動に踏み込めなくなるんだけど」


そう言って苦笑すると、高遠さんは横目で私を見つめて来る。


プライベートなのにプライベートの姿じゃない高遠さんに、私は硬直したまま反応を返すのも忘れてしまった。
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