常務サマ。この恋、業務違反です
そんな私に、高遠さんはフッと眉を寄せた。


「おかしいな。……俺にはあんたの考えてること、ひしひしと伝わって来たんだけど」

「え?」

「もう少し一緒にいたい、って」


耳元で囁かれて、鼓動が一度大きく音を狂わせた。


「俺の勘違いだったのかな」

「勘違いじゃないっ……」


溜め息混じりの声に、私は思わず素直に声を上げていた。
思いっ切り振り返って、直ぐ目の前にある高遠さんの顔に、カアッと頬が熱くなる。


そんな私に目を丸くした後、高遠さんは少し顔を俯けて肩を揺すって笑い出した。


手の平の上でいいように転がされている感覚に、私は思わず頬を膨らませた。
それでも高遠さんは笑ったまま腕を緩めて、私の肩に手を置くとクルッと回転させる。
真っ正面から向き合わされて、気恥かしくて反射的に俯いた。


「でも……高遠さん疲れてたし」


取り繕うように言葉を探した。
高遠さんは黙ったまま私の髪を軽く掻き上げてくれる。


「は、初めてデートらしく過ごせたから、このまま帰りたくないって思ったけど、我儘言って困らせたくなくて」


高遠さんの仕草があまりに優しくて甘いから、虚勢で隠した私の心は簡単に瓦解されて行く。


一気に恥ずかしい想いを口にして黙り込んだ私に、高遠さんはフッと息を吐いて笑った。
ごめん、と短く呟く。そして、でもさ、と直ぐに言葉を続けて。


「我儘言えるのは、彼女の特権だと思うんだけど?」


咎めるような口調でそう呟いて、高遠さんは私の頬を両手で押さえると、グッと覗き込んで来た。
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