常務サマ。この恋、業務違反です
ガラス貼りの自動ドアの前に立った航平が、ゆっくりと威厳を感じさせる仕草で振り返る。
そんな姿を見慣れている私でも、ドキッとしてしまう。


「あのっ……。後日ゆっくりお話しさせて下さい。
都合のいい日時をお教え頂ければ、私の方はいくらでも予定を調整しますから」


顔を上げて隣の加瀬君を見上げた。


その顔は見慣れないくらい真剣で、『担当』としての責務を一身に背負ってるのが伝わって来る。


加瀬君が今までどんなに頑張っても、航平と面会する約束を取れずにいたことを思い出す。
同業者だからこそ、私は加瀬君の苦労がわかる。


加瀬君に、ちゃんと返事を返して欲しい。
そんな思いが過って、私も加瀬君と同じように航平を見つめた。


航平は軽く上体を振り返らせた姿勢のまま、ポケットに手を突っ込んで肩を竦めた。


「……予定の管理なら、彼女に任せてます。
立て込んでない時なら、アポイント取ってもらえればいつでも構いませんよ。……じゃ」


相変わらずスマートにそう呟いて、航平は小さく会釈して廊下に出て行った。


その背中を見送った後、足の力が抜け切ってその場にしゃがみ込んでしまった。


「あ、おい!?」


いきなりへたり込む私に驚いて、加瀬君が軽く身を屈めて私に腕を貸してくれる。


「き、緊張した……」


思わず呟いてホッと息をつくと、


「なんで葛城が緊張するんだよ」


と、加瀬君が苦笑した。
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