常務サマ。この恋、業務違反です
軽く痛みを感じるくらい強い力に、思わず顔をしかめる。
それでも航平は私の表情を気遣う余裕もなく、その額を私の肩に預けて来た。


「俺は、仕事に全力を注ぐ希望が好きだよ。だからこそ……希望をあんな風に蔑む上司の元に、このまま返したくない」


確かな意志を湛えて航平が耳元で囁く声に、思わずドキッとしてしまう。


頭の中が、これでもかってくらい混乱していた。
それでも航平の声と力強さだけがスーッと身体に沁み込んで来る。


「……希望、これからも俺の傍にいろ」


全ての迷いを断ち切ったような凛とした航平の言葉に、大きく心が揺さぶられた。


「これ以上、理不尽な業務命令で苦しめたりしないから」


力強く吐き出される言葉に、私の目尻から涙が零れた。


「……私……航平を騙してたんだよ?」


鼻を啜り上げながら呟いた言葉に、航平は小さく頷く。


「それでも……こんなとんでもないことでもなければ、希望と出逢えなかった。寧ろ、俺は感謝してるよ」


そう言って、航平は私の身体を抱き寄せた。


意識はちゃんと働いている。
さっきからの冷やかしの視線が強まるのもちゃんとわかってる。
それでも今はそんなことどうでも良くて、私は航平の胸に顔を埋めた。


「ごめん……。ごめんなさい、航平っ……」


その胸にしがみ付いて声を上げると、ん、と短い声が降って来る。
航平の声と温もりがあまりに温かくて、私の心はあっさりと簡単に溶かされていってしまう。


「……ありがとう……」


振り絞るように言った言葉に、耳元に聞こえる航平の鼓動が、トクンと、音を立てて答えてくれた気がした。
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