常務サマ。この恋、業務違反です
あの日から、加瀬君は私の為に動いてくれていた。


そのおかげで、私は派遣契約満了の六月末まで『派遣』としてここに残って、同日付での退職が決まっていた。
その後は、年末まで航平の秘書として直接雇用の話が進められている。


加瀬君が執務室から出て行くと、いつもと変わらず私と航平の二人きりになった。
その途端に、航平はソファから立ち上がって、自分のデスクに向かって行く。


「……航平」

「希望、次の予定、何時からだっけ?」


明らかに話題を変えようとしているその態度が白々しい。


「私を調査していた理由は話してもらったけど、どうやらまだ何かありそうですね」


航平のデスクの前に立って、腕組みして首を傾げて見せる。
航平はキーボードに手を伸ばしたまま、一瞬固まった。


「……もしかして、それ以上に恥ずかしいことなんですか?」


それならさすがにこれ以上聞き募るのもどうかと思うんだけど……。


航平は、私を調査していた理由を顔を真っ赤にして話してくれた。


『希望がこんな辛い想いする羽目になったのも、元はと言えば俺のせいだ』


そう言って、自分を恥じるように顔を背けて、嫉妬したんだよ、と呟いた。


私と加瀬君が普段から同僚だって知らなかったんだから、その仲を勘繰ったのは責められない。


『これまでも加瀬君が希望の担当になったことがあるのか、とか。実は結構長い付き合いなのか、とか。
それが知りたくて、希望の調査をさせてたんだ』


さすがにあ然としたけど、航平の目にそう映ったことに戸惑いはした。
そんな私に航平は更に言葉を続けた。


『もちろん希望と付き合う前の段階の指示だった。今はもちろん希望を信じてるし、疑ったりしてない』
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