常務サマ。この恋、業務違反です
「いや……、うん。もしかしたら、人選ミスだったのかな、と……」

「ちょっと、なに、それ」


なんだかとても腹の立つことを言われているような気がする。
それが私の気のせいじゃないと証明するように、加瀬君は気まずそうにゆるゆると私から視線を逸らした。


「大丈夫だとは思うけど。もしそういうことがあったら、ちゃんと俺に報告して。
場合によっては、三ヵ月と言わずに契約切り上げることも社内で検討するから」


いろんなことを考えるように言いながら、最後は自分の言葉に納得するかのように、うんうんと頷いてみせた加瀬君に、私の中で何かがブチッと音を立てて切れた。


「……そんなこと、絶対ないって思ってるんでしょ……」

「そんなことないよ! 相手が相当見境ない男だとしたら、葛城の身の心配もしなきゃいけない訳で……」

「ちょっと失礼なんじゃないのっ!?」


腹立ち紛れに立ち上がって、加瀬君に大きく手を振り上げてみせた。
本気で焦った加瀬君が、うわっと言いながら両腕で頭をガードする。


「怒るなよ~!! 何もないにこしたことないだろ!」

「それでもなんかその言い方がムカつくの!!」

「なんでだよっ! じゃ、何。葛城もその高遠さんからセクハラ受けたいわけ!?」

「そんなこと言ってないでしょ!? バカっ!!」


総合受付の片隅だというのに、そんな本気の言い合いをして、私も加瀬君も肩で息をした。
そしてお互いに黙り込んで一瞬睨み合った後、ほとんど同時に吹き出して笑った。


ああ。
やっぱり、こういうやり取りが本気で出来るオフィスに、早く戻りたい。
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