雨上がりの虹のむこうに


 なくしてしまうなら、要らない。


 そうして自分のことを可哀想だと涙にくれて生きていきそうだった。


 山並さんといたら、目の前が開けていくようだった。鮮やかな空、高くそびえる峰。山並さんの見せてくれる景色は、どこまでも雄大で小さなことに悩んでいる自分が恥ずかしかった。



「マッキンリーは世界で一番高く見える山です。その山から見える景色を品川さんにも見せたいんです。他に遮るものなどない、空に一番近い場所です。これからも、品川さんにはずっと同じ景色を見せたい」

 普段はっきりしない山並さんの、強い言葉に顔を見上げてしまう。

「見せてください……ずっと」

 がっしりとした腕が私を包み込んだ。山並さんの香りに包まれて、ぎゅっと抱きしめられた。



 頭の上で息がふるえる。私も山並さんの体を抱きしめて答えを返す。






 やっと気持ちが通じて、心が温かくなる。失ったものを忘れないように必死になるより、大切に思える存在を見つけられたことで、自分が強くなれることがわかった。

 

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