雨上がりの虹のむこうに
 にこりと相手に安心感を与える笑顔を作る。あまり美人だとは言われたことのない私が、唯一褒められるものが、この人当たりの良さだ。


 家族にも友人にも綺麗な人が多かったので
、美人でない私はせめて不快な印象を与えないように、泣いたり怒ったり激しい感情を露わにしたことはない。だからこれは私を守るための仮面でもある。


 今では仕事柄、人に接する機会のある私にはなくてはならないものになっている。


「ここで立ち話もいけませんから、中へ案内いたします」


 ほっとした山並さんの顔を視線の端に留めながら、案内に立つ。武骨そうな体に似合わず、口元を緩めた顔がかわいらしく思えた。


 先にたって歩きながら、山並さんをどう説明したらいいのか考えていた。


 でも、何をどう言ったところで誰もが山並さんの写真を見たら、きっと目を奪われる。私が息を潜めるように見つめてしまったように。
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