雨上がりの虹のむこうに
 建物内に案内して、席をすすめるとおずおずと体を落ち着けた。その姿は、大きな熊が体を縮めているようで何だか可愛らしく見えた。

 好みの飲み物を用意しますと声をかけたら、緑茶をくださいと返ってきた。茶器を温めるためのお湯をさし、急須に玉露の適温である60度のお湯を入れ、ゆっくりと抽出する。

 とろりとした濃い緑色が白磁の器に映えている。

 今日の打ち合わせは、午後からなので山並さんの話を上役に通すことができそうだ。ある程度話をつめておけば話も早い。

 これだけの作品を撮れる山並さんだもの。上役からの了承もすぐに貰えるはず。


 颯爽とトレイを手に山並さんのもとへ向かうと、山並さんの前には見慣れた背中があってドキリとする。

 そしてなにやら深刻な顔をして話をしている。恐る恐る近づいて確認すると、やはり店長の石原さんだった。
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