会社で恋しちゃダメですか?
第四章
一
ひどい連休だった。
翌朝、山科に「風邪をひいたので、休ませてください」と一通のメールを送ると、「お大事に」という一文だけの返事が返って来た。熱が下がらないのは本当だったが、出社したくないのも事実。山科はきっと園子が逃げたのだと、そう思ったのにちがいない。
仕事とプライベートを分けて考える。そんな器用なこと、山科はできているのだろうか。
いや、きっとできている。
ちゃんと仕事をこなしているだろう。
そう考えると、自分の弱さに腹が立った。
連休中、朋生からメールが入った。
「大丈夫だったか?」それと「ごめんな」と。園子は「平気」と返したが、完全な嘘だ。朋生は見破ったかもしれないけれど、あえて何も言ってこなかった。
テレビをつけると、あおいがTSUBAKI化粧品の口紅のコマーシャルに出ている。
彼女は、あの父親に勝ったのだ。
もう、むやみに山科と引き裂かれることもないだろう。
山科とあおいのために、喜んであげるべきだ。
二人はこれで幸せになれるんだから。
連休明けには、身体もそして心も回復させていなければ。
せめて仕事はちゃんとしよう。
山科に仕事で必要とされるよう、頑張るのだ。
連休の最後の方には、園子もそんなことを考えられるほどに、回復していた。
前向きに。
前向きに。
泣きたいけれど。
がんばるのだ。