会社で恋しちゃダメですか?


朋生が園子をいぶかしげに見る。山科は表情をかえず「池山さん、何?」と訊ねた。


「あのっ。わたしが、助けてくださいって、お願いしたんです」
園子は必死に説明しようとする。


「部長がTSUBAKIの社長の息子さんだって知って、社長に抵抗できるのは部長しかいないって、口説いたんです!」
園子は、うまく回らない口で、なんとかしゃべり続けた。だんだんと腰が浮いて来て、拳を振り上げる。


「このまま商品だけとられて、社員をリストラするだなんて許せなかったし、それにっ部長のお父様、TSUBAKIの社長、ほんとに、いけすかない人なんです。上から目線で、意地悪で、腹立つ人なんですよ、部長に対してもひどいことしか言わないしっ」


園子の頭がこんがらがってくる。
「だから、あの親父にやり返してやろうって、部長に言ったんです」


ぶはっ。


山科が吹き出した。お腹を押さえて、笑い転げてる。


「ぶ、部長?」
熱くなっていた園子は、我に帰った。


もしかして、けっこう、ひどいこと、言っちゃったかも。


園子の頬がかあっとあつくなる。
「し、失礼しました」
慌ててパイプ椅子に腰掛けた。


「部長は、TSUBAKIの社長と、仲が悪いんですか?」
おそるおそるというように、戸崎が訊ねる。


「まあ、よくはないよ。池山さんの言う通り」
また山科が爆笑する。「いけすかない親父だから」


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