会社で恋しちゃダメですか?
「それじゃあ、池山さんの言ってることは……」
「ほんとほんと。いけすかない親父にやりかえしてやろうって、思ったんだよ」
「そうか……」
一同から肩の力が抜ける。ほっとしたような空気が広がった。
「会議、続けていいか?」
笑顔の山科が周りを見回す。
「あっ、ちょっと聞いてもいいですか」
広報部の石野が、こみ上げる笑いを我慢するような顔で、手をあげた。
「モデルのあおいと付き合ってるって、本当ですか?」
大胆な質問に、一同が「おお」とどよめく。
園子は目を伏せた。
「昔な」
山科はそう答える。再びどよめく一同。
「質問は以上?」
「はい、脱線してすみませんでした」
石野は満足した様子で謝った。
「じゃあ、会議つづけよう」
山科はトントンと資料の角をそろえ、仕事モードに入った。
会議室の空気が、始まりのときとまったく違う。
園子はほっと胸を撫で下ろした。