会社で恋しちゃダメですか?


園子が会議室の中で立ち尽くしていると、「園子、馬鹿じゃない?」と声が聞こえた。
振り向くと、扉のところに紀子が立っている。


「馬鹿? なんで?」
園子は紀子の呆れた顔を見ながら、さっぱり訳がわからない。


「今の会話で、想像できることがあるでしょ?」
「想像するって、何を?」


園子が言うと、紀子ははあっと大きく溜息をついた。園子の隣にツカツカ歩いてくると「はい、座って」と、まるで先生のように言った。


園子は素直に座る。紀子も園子の隣に座った。ほおづえをついて、園子のぽかんとした顔を、馬鹿にしたように眺める。園子はどうしてそんな表情をされるのか、意味がわからない。


わたしが馬鹿?
それは、よく知ってるけれど。


「わたし、会議室のパーテーションに耳をくっつけて、全部聞いてたのよ」
紀子が自慢げにいうので、「それは、まずいんじゃないの?」と園子は思わずとがめた。


「だって、聞かずにはいられないわよ」
「ええ?」
「まあ、わたしのことはいいって」
紀子は首をぶんぶん振って、話を元に戻す。


「明らかに、あおいは、園子をライバルだと思ってんのよ」
紀子は自信ありげにそう言った。

< 120 / 178 >

この作品をシェア

pagetop