会社で恋しちゃダメですか?
「誤解してるんじゃない?」
園子は答える。
「だって、部長の家に、二人のマグカップが大切にとってあったし、それにわたしには『忘れて』」って言ったもの」
紀子の目が、きらっっと光る。
「『忘れて』って、何を?」
「えっと……」
園子は思わず口ごもる。山科の腕が園子を捉えたときの、暖かさと高揚感を思い出して、顔が赤くなった。
「なんだ、もう、そんなに進んでるの?」
園子の顔を見て、紀子が半ば怒ったような顔をする。
「進む? ちがうちがう。そんなんじゃないよ」
園子はあわてて否定した。
紀子はほおづえをついて、園子をじっくりと見て言った。
「よく考えてごらん。今までの部長の言動をさ」
「……」
「園子はもう、子供じゃないんだから、想像つくでしょ?」
紀子に言われて、山科と過ごした時間が甦る。
言葉も。
表情も。
なにもかも。
「そんなわけ……ないし」
園子が否定すると「劣等感もほどほどに」と、紀子がぴしっと叱りつける。
「聞いてみなよ、部長に。『わたしのこと、どう思ってるんですか』って」
紀子はそう言った。