会社で恋しちゃダメですか?
三
紀子が変なことを言うから、気にし始めてしまった。
ここ数日、コンピュータに向かっているときも、電話を受けているときも、コーヒーを入れているときも、山科のことが気になってしまう。
まさか。
そんな訳がない。
だって……。
あおいの完璧なスタイルを思い出した。輝いた瞳。はつらつとした笑顔。まっすぐの脚に、繊細な指先。山科と並んでいると、まるで映画をみているような気分になる。
「池山さん」
声をかけられて、園子ははっと顔をあげた。
部長がデスクから呼んでいる。
「はいっ」
園子は自分の恥ずかしい想像を隠して、なるべく平静を装って山科の前へと歩いて行った。
部屋にはいると、山科がコンピュータから目を上げて、園子を見る。
「今日の夕方、僕は早退するから」
「早退ですか? おかげんでも悪いんでしょうか」
園子はどこか悪いのかと思って、山科の顔を覗き込むよう、身をかがめた。
「ちがうよ」
山科はそんな園子を見て、なんだか笑い出しそうな顔をする。
「TSUBAKIのパーティに出席する」
山科が仕方がないとうような顔で、そう言った。
「あおいさんとですか?」
余計なことだとわかりつつ、園子は思わず訊ねてしまった。
「ああ」
山科が気まずそうに目をそらす。
仲直りできたんですか?
のど元まで言葉がでかかって、園子はぐっと飲み込んだ。
さすがに立ち入りすぎだ。