会社で恋しちゃダメですか?
夕方五時頃、山科が部屋を出て行った。
紀子が「やっぱり、行くんだね」とつぶやくのが耳に入ったが、園子はあえて返事をしなかった。口を開くと、いろんな気持ちをしゃべってしまう気がしたからだ。
「ネット記事に出るかなあ」
紀子はわくわくしている様子を隠そうともしない。
「だって、部長が出るんだよ。やっぱりチェックしなきゃでしょ」
紀子がまくしたてる。
「紀子がはしゃいでどうすんだよ」
朋生が呆れたような顔で言った。
「この間、朋生残念だったね。あおい、超キレイだったんだから」
「いいなあ、俺も見たかった」
朋生はそう言いながら、ちらりと園子を見る。複雑そうな表情をした。
いたわりか。同情か。
「でもねー、実はねー」
紀子が何か言いたそうな顔になった。「あおいとは、もう、部長終わってんの」
朋生が「え?」と驚く。
「それでねー、新しい恋を始めるようですよ」
紀子が「おほほほ」と、おどけて笑う。
園子は「始めないと思うよ」とつい口に出してしまった。
「何いってんの?」
紀子がイラっとしたような声を出す。
「まだわからないでしょう?」
「わかってるの」
「またまたあ」
「だって、あおいが大切だって、わたしに言ったもの」
その場が急に静かになった。
紀子が「あちゃー」という顔になる。
「だから、もう、この話はおしまい」
園子が言うと、二人とも気まずい雰囲気に口をつぐんで、仕事に戻って行った。