D.o.t.L~Drag of the Love~
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【蓮side】
彼女から声をかけられたとき、俺は心臓が止まったような気がした。
いつも脳裏にいた、彼女の顔がいま目の前にあった。
「.......っあ」
「昨日っ、買いに来たこでしょ?!」
俺を指さしながら、駆け寄る彼女からは昨日したのと同じ甘い匂いが香っていた。
「.......はい、じゃがいも。」
俺は足元に転がってきたじゃがいもを彼女の白く細い手の上に乗せた。
「あっ、ありがと」
「そうですよ、昨日買いに行ったものです」
覚えてくれていたことが嬉しくて俺は彼女の質問にこたえた。
────ずっと俺は覚えてたよ
少し高めの声にぽんぽんと俺に質問する姿はまるで、小さな妹ができたように思えた。
でも時折、みせる寂しく妖艶な横顔は、俺の心を少しずつ苦しめた。
────なぜ、そんな顔をするの?
──────なにをおもってるの?
次々に実感した覚えのないもどかしい感情と、自分の中に煮え立つ疑問の数々に俺は戸惑うしかなかった。
「ふぅーーんっ、ここら辺に桜鈴の学生がいるなんてびっくりだなあ。あんなものやってるってことにも」
「べつにっ、俺!...俺、クスリなんてやってないです」
俺はそんな弱いことはしない。
俺はもっともっと、クスリやってるやつらよりも強くて
幸せな.......はずだ。
きみも─────。
君も強くて、あんなもの手にしたりなんてしてないだろ?
君なんかが、クスリなんて似合わないよな
君も俺と仲間だよな。
しょうがなく、ここの場所に複雑な理由があっているんだろ?
「もしかしてさ」
俺はわかっていたのかもしれない
だから.....
「さがしてる?」
だから、俺はこの言葉を
この事実を知るまで
心の中でずっと否定していたのかもしれない。
彼女には、やっていて欲しくなかったから。
「え?なにをですか?」
───────言わないでくれ。
「私、やってるけど
───────クスリ。」
俺の中の大きくふくれあがった泡が
プツンっと割れるのがわかった。