溢れる手紙
チュンチュンチュンチュン…
鳥の声が聞こえ、あたしは目を覚ました。
「今日は、いい天気だな〜」
カーテンを開け、背伸びをした。ご飯を済ませて制服に着替えた。家を出ると、なんとそこには昨日一緒に話してた海星くんが居た。バイクに跨っていて…寝ていたのだ。近くに行くと、体を上下に動かしてスースと寝息を立てていた。
「海星くーん」
耳元で呼んでみるけども、全く起きない。
「起きてー、もう朝だよ〜」
次は、背中を叩いて起こした。海星くんは、ピクってなって目を擦りながらあたしを見た。まだ眠そうだ。寝起きの海星くん、なんか可愛い…
「おっ、友希。おはようさん」
元気がいい。
「おはよう!てか、なんでここに?」
すると、思い出したように
「あっ、俺友希を送ろうと思ってきた。」
「えっ!ほんとに!」
あたしは、嬉しかった。だって、歩かなくていいから楽なのもあるけど、一番は海星くんのバイクにまた乗れる事一緒に学校に行ける事。多分、自分の今の顔口元緩んでるんだと分かる。
早速、後ろに跨った。
「ねぇ…」
海星くんが小さな声で言った。
「何?」
すると、いきなりあたしの腕を掴み自分のお腹に巻き付かせた。
「え?」
あたしは、目を大きくして海星くんを見た。
「お腹壊すから、その…」
海星くん、動揺してる。顔を真っ赤にしながら言っていた。なんか、新しい海星くんを見れたな…もっと見てたいよ…あたしは、何故か『この気持ち』が抑えきれなくなり
「海星くん!あたしね…あたし、海星くんが好きなの!」
ああ…いってしまった…
沈黙が続く。
「あ、ごめ…」
「俺も!」
「え?」
さっきまで背中をあたしに向けていたけど、ゆっくりとこっちに体を向けて真っ直ぐとこっちを見た。視線が絡み合う。ドキドキ…ドキドキ…止まんない。
「好きです。」
ドキ!
すると、海星くんは口を開いた。
「俺、初めてなんだ。人をこんなにも大事にしたいって思ったのは。」
どこを見てるのか分からない。あたしの知らない所を見ながら話してる海星くん。
「餓鬼だった頃は、めっちゃ荒れてて今とは全然違う俺がいた。女を乱暴に愛しては捨てて毎日その繰り返し。」
それを、思い出すかのように苦笑していた。
「最低だな。俺…今頃気づくなんて最低だ…
自分が分からなくなった。多分、自信がなかったんだと思う。」
「自信…?」
「そう、自分を大切にしようとする自信。
いつ死んでもいい生活を送ってた。誰かを守ろうとか馬鹿みてぇとかも思ったし、別に自分自身消えてなくなればいいのにとかも思った。」
海星くんは、最終的に下を向いていた。弱々しい声。あたしは、自然と涙が出てた。悲しい。そんなこと言わないでよ…死ぬなんて言葉は一番残酷で悲しい事。
あたしの泣いてる姿を見て、頭を撫でていた。「あたしの目の前から、消えないでよ。」
すると、手の動きが止まり
「うん…」
あたしを、包み込むように抱きしめた。
「俺、お前なんかが居たから強くなれた。人を大事にしようって思った。どんな友希でも受け止めていく。絶対、守り抜くよ」
その、言葉を聞いて涙線が切れた。
声を出して泣いているあたしを優しい瞳で見つめていた。
「あ…やべ、もうこんな時間」
海星くんは、時計を見ながら言った。
ハッ…!しまった…学校行ってない…
あたしが、焦っていると
「学校どうする?」
って聞いてきた。今から行っても、もう遅いしな…
「一緒に怒られちゃおっか?先生に」
苦笑いを浮かべた。
「そうだね…」
あたしも、つられて苦笑いで対応した。
「よっし、なら俺んち行くか!」
え、俺んち!?いやいや…ちょと待てよ。何にも差し入れないし、親に会う自信がないっていうか…
「えっ」
あたしが、考えているうちに腕を引っ張られバイクで連れて行かれた。運転中に、海星くんから話しかけられたけどいつの間にか寝ていたあたし。背中…落ち着くな…
「お…い…!」
んっ…あたしの、体が揺れてる。
「おい!起きろー、着いたぞ。」
ハッ!パチッと目が覚めて、辺りを見回した。海星くんの家だ…庭が広くて、そこには花が綺麗に並べてある。その前には、一軒家の家。広いな…
「行くぞ」
手を握って、家に入る。
「お邪魔します!」
お母さんやお父さん方々に聞こえるようにハキハキと言った。すると、横にあるドアから女性が出てきた。
「俺の彼女」
ニッて笑ったその女。
「あっ、初めまして!田島友希です」
「初めまして。あたし、こいつの姉です!宜しく。」
お姉さん!?全然似てない。どうやら、お姉さんは海星くんの事コイツって呼んでるらしい。
「コイツってなんだよ。」
海星くんは、お姉さんを睨んでる。
「どうぞ」
「失礼します。」
階段を上り、右側の部屋へ入った。
あたしは、ベットの上に座った。
「お姉さん、綺麗だったな」
独り言のように呟くと
「そうか?アイツ、詐欺なんだよ。化粧でごまかしてるだけ」
と、冷たく吐いた。
「てか、友希。海星くんって呼ばれるの嫌じゃないけど変えて欲しいな」
海星くんは、あたしの隣に座った。
んー、海星くん…海星?いや、呼び捨ては出来ないな。あっ!
「海ちゃん!」
あたしは、思いついたように海星くんを見た。
「海ちゃん!?」
想像外の名前だったらしく、かなり驚いている。
「はい、決定ね!」
「まぢかよ。ま、悪くはねぇしいっか」
すると、海ちゃんはベットに横になった。あたしの目を見て来いよって顔してる。
黙って横にいった。そして、目を瞑って頭を撫でられた。今、向かい合わせの状態。海ちゃんの顔をこんな近くで見るって幸せなんだな。死んだように寝ている。鼻から、スースと聞こえ、身体は上下動いている。
「無防備すぎ」
フッと、鼻で笑ったあたし。そして、瞼を閉じた。
ドアを開ける音が微かに聞こえてくる。
「んっ…」
ゆっくりと目を開く。横にいた海ちゃんが居ない。えっ、と思い周りを見渡す。
「起きた?」
部屋に入ってきて、寝起きの声。
「うん…」
あたしは、目を摩りながらお茶を貰った。
「ありがとう」
「おう。もう暗くなってるから、送ってく」
そう言って、ガラステーブルの上から鍵を持った。
「うん。」
なんだか、物足りない感じがして寂しかった。もっと一緒にいたかったな…この思いが顔に出ていたことが分かって、下を向いてた。「お前…寂しいなら寂しいってちゃんと俺に言えよな。」
海ちゃんは、あたしを強く抱きしめた。
「ごめん」
「俺は、友希の気持ちなんてもう分かるんだからな。気づいてないとでも思うなよ」
自慢げに話してきた。そんなあたしも、海ちゃんの気持ちはわかってないようで分かってるんだよ…
「海ちゃんも強がってるくせに。」
身体をちょと離すと、真剣な顔であたしを見ていた。あたし達は見つめあっていた。
「バレた?」
ベロを出して、てへってしてる。
「バレバレ」
真顔で言うと、
「やっぱ、お前にも分かるんだな。俺の気持ちが」
「舐めんなよ〜」
なんて、話しながら笑いあった。「よし、行くか」
手を握りしめ、部屋を出た。
階段を降りて、玄関に行くなり靴を履いた。
「お邪魔しました!」
元気よく、挨拶をするとリビングの方からお母さんの返事が聞こえた。
「ほいっ」
メットを渡され、バイクに跨った。風って、こんなに気持ち良かったっけ?生温い風が身体に触れる。こんな感じ好き…
信号が赤になるたんび、海ちゃんは後ろを向き、大丈夫か?とか、落ちんなよ?って一言声をかける。あ、また赤…だ。案の定、こっちを向く。
「しっかり持っとけよ」
「うん!」
心配症なのか?心配されることは、いい事なんだけどあたしは大丈夫。ずっとそう思う。
走らせて、およそ30分。家の前に止まった。
「送ってくれて、ありがとうね!」
淋しさを吹き飛ばすかのように、笑顔で言った。
「おう!また、明日」
去ってしまった。海ちゃんの、また明日って言葉を聞くたんびに嬉しいんだ。会えるという期待ができるから。その期待を胸に、また明日も頑張ろうって思える。
「ただいま」
あたしはリビングに一直線に向かった。
「今日のご飯はカレーよ」
テーブルを見ると、四人分のカレーが置いてあるのだ。席につき、久しぶりの四人での食事。
「いただきます!」
弟の威勢のいい声を初め、お父さん達も手を合わせていた。
「いただきます」
スプーンですくって食べた。
「ん!美味しい!」
「良かったわ〜」
お母さんは、嬉しそうだ。
ご飯を済ませ、部屋へと向かう。雑誌を手に取ってベットにゴロンとなった。
ピロリピロリ…
携帯が鳴り響いた。
「誰だ?」
開くと、
¨不在着信¨
え?誰だろ?恐る恐る、受話器ボタンを押した。
「もしもーし」
その声は、男の声だった。声の周りは、ガヤガヤしてる。
「誰なのよ、あんた」
あたしは、威嚇するように発した。
「お前、龍の幼なじみだろ」
「そうだけど、それがなにと関係してるのよ?」
そう聞くと、男は黙ってしまった。
「なんか言いなさいよ。」
「…」
「もう、切るわね」
と、言って耳元から携帯を離して切ろうとしたその時…
「今、こいつは俺が預かってる。」
不気味な笑いをした。
「はっ?どういう意味?」
「明日の朝までに来ないと、龍の命はない」
ブチ…切られた。あたしは、携帯を投げ捨て走って外へと行った。外は既に真っ暗で何も見えなかった。
「どっ、何処なのよ」
大声で名前を呼んで探したけど、勿論返事なし。あたしは、必死に辺りを見回した。もう限界…体力がなくなりその場で倒れ込んだ。
「早くしなきゃ、龍が…龍が死んじゃう」
涙がじわじわと出てくる。そのせいで、視界が見えなくなっていた。龍がよく行きそうな所…もう手段はそれしかなかった。でも、混乱してるせいか、何も思い浮かばなかった。
「あ…あっ」
諦めかけたそのとき
「海辺…海辺だ!」
あたしは、今までにないくらいもうスピードで走って行った。そう言えば、龍は何か落ち込んでる時とか、悩み事があったりするといつもあそこの場所に行くんだ。
海辺が見えてきた。
「龍…お願い。居て。」
祈るように吐いた。それは、消え入りそうな声だ。
着いた。周りを見ると、3人ぐらいの男が目に入った。
「龍!」
そこに向かって走った。龍は、こっちを見ていた。その姿は、悲惨だった。殴られた跡が顔や足にいっぱいあった。
「ようやく来たか。間に合ったようだな」
その声は、昨日電話で話していた男だった。
あたしは、怒りがこみ上げてきてその男を睨んだ。
鳥の声が聞こえ、あたしは目を覚ました。
「今日は、いい天気だな〜」
カーテンを開け、背伸びをした。ご飯を済ませて制服に着替えた。家を出ると、なんとそこには昨日一緒に話してた海星くんが居た。バイクに跨っていて…寝ていたのだ。近くに行くと、体を上下に動かしてスースと寝息を立てていた。
「海星くーん」
耳元で呼んでみるけども、全く起きない。
「起きてー、もう朝だよ〜」
次は、背中を叩いて起こした。海星くんは、ピクってなって目を擦りながらあたしを見た。まだ眠そうだ。寝起きの海星くん、なんか可愛い…
「おっ、友希。おはようさん」
元気がいい。
「おはよう!てか、なんでここに?」
すると、思い出したように
「あっ、俺友希を送ろうと思ってきた。」
「えっ!ほんとに!」
あたしは、嬉しかった。だって、歩かなくていいから楽なのもあるけど、一番は海星くんのバイクにまた乗れる事一緒に学校に行ける事。多分、自分の今の顔口元緩んでるんだと分かる。
早速、後ろに跨った。
「ねぇ…」
海星くんが小さな声で言った。
「何?」
すると、いきなりあたしの腕を掴み自分のお腹に巻き付かせた。
「え?」
あたしは、目を大きくして海星くんを見た。
「お腹壊すから、その…」
海星くん、動揺してる。顔を真っ赤にしながら言っていた。なんか、新しい海星くんを見れたな…もっと見てたいよ…あたしは、何故か『この気持ち』が抑えきれなくなり
「海星くん!あたしね…あたし、海星くんが好きなの!」
ああ…いってしまった…
沈黙が続く。
「あ、ごめ…」
「俺も!」
「え?」
さっきまで背中をあたしに向けていたけど、ゆっくりとこっちに体を向けて真っ直ぐとこっちを見た。視線が絡み合う。ドキドキ…ドキドキ…止まんない。
「好きです。」
ドキ!
すると、海星くんは口を開いた。
「俺、初めてなんだ。人をこんなにも大事にしたいって思ったのは。」
どこを見てるのか分からない。あたしの知らない所を見ながら話してる海星くん。
「餓鬼だった頃は、めっちゃ荒れてて今とは全然違う俺がいた。女を乱暴に愛しては捨てて毎日その繰り返し。」
それを、思い出すかのように苦笑していた。
「最低だな。俺…今頃気づくなんて最低だ…
自分が分からなくなった。多分、自信がなかったんだと思う。」
「自信…?」
「そう、自分を大切にしようとする自信。
いつ死んでもいい生活を送ってた。誰かを守ろうとか馬鹿みてぇとかも思ったし、別に自分自身消えてなくなればいいのにとかも思った。」
海星くんは、最終的に下を向いていた。弱々しい声。あたしは、自然と涙が出てた。悲しい。そんなこと言わないでよ…死ぬなんて言葉は一番残酷で悲しい事。
あたしの泣いてる姿を見て、頭を撫でていた。「あたしの目の前から、消えないでよ。」
すると、手の動きが止まり
「うん…」
あたしを、包み込むように抱きしめた。
「俺、お前なんかが居たから強くなれた。人を大事にしようって思った。どんな友希でも受け止めていく。絶対、守り抜くよ」
その、言葉を聞いて涙線が切れた。
声を出して泣いているあたしを優しい瞳で見つめていた。
「あ…やべ、もうこんな時間」
海星くんは、時計を見ながら言った。
ハッ…!しまった…学校行ってない…
あたしが、焦っていると
「学校どうする?」
って聞いてきた。今から行っても、もう遅いしな…
「一緒に怒られちゃおっか?先生に」
苦笑いを浮かべた。
「そうだね…」
あたしも、つられて苦笑いで対応した。
「よっし、なら俺んち行くか!」
え、俺んち!?いやいや…ちょと待てよ。何にも差し入れないし、親に会う自信がないっていうか…
「えっ」
あたしが、考えているうちに腕を引っ張られバイクで連れて行かれた。運転中に、海星くんから話しかけられたけどいつの間にか寝ていたあたし。背中…落ち着くな…
「お…い…!」
んっ…あたしの、体が揺れてる。
「おい!起きろー、着いたぞ。」
ハッ!パチッと目が覚めて、辺りを見回した。海星くんの家だ…庭が広くて、そこには花が綺麗に並べてある。その前には、一軒家の家。広いな…
「行くぞ」
手を握って、家に入る。
「お邪魔します!」
お母さんやお父さん方々に聞こえるようにハキハキと言った。すると、横にあるドアから女性が出てきた。
「俺の彼女」
ニッて笑ったその女。
「あっ、初めまして!田島友希です」
「初めまして。あたし、こいつの姉です!宜しく。」
お姉さん!?全然似てない。どうやら、お姉さんは海星くんの事コイツって呼んでるらしい。
「コイツってなんだよ。」
海星くんは、お姉さんを睨んでる。
「どうぞ」
「失礼します。」
階段を上り、右側の部屋へ入った。
あたしは、ベットの上に座った。
「お姉さん、綺麗だったな」
独り言のように呟くと
「そうか?アイツ、詐欺なんだよ。化粧でごまかしてるだけ」
と、冷たく吐いた。
「てか、友希。海星くんって呼ばれるの嫌じゃないけど変えて欲しいな」
海星くんは、あたしの隣に座った。
んー、海星くん…海星?いや、呼び捨ては出来ないな。あっ!
「海ちゃん!」
あたしは、思いついたように海星くんを見た。
「海ちゃん!?」
想像外の名前だったらしく、かなり驚いている。
「はい、決定ね!」
「まぢかよ。ま、悪くはねぇしいっか」
すると、海ちゃんはベットに横になった。あたしの目を見て来いよって顔してる。
黙って横にいった。そして、目を瞑って頭を撫でられた。今、向かい合わせの状態。海ちゃんの顔をこんな近くで見るって幸せなんだな。死んだように寝ている。鼻から、スースと聞こえ、身体は上下動いている。
「無防備すぎ」
フッと、鼻で笑ったあたし。そして、瞼を閉じた。
ドアを開ける音が微かに聞こえてくる。
「んっ…」
ゆっくりと目を開く。横にいた海ちゃんが居ない。えっ、と思い周りを見渡す。
「起きた?」
部屋に入ってきて、寝起きの声。
「うん…」
あたしは、目を摩りながらお茶を貰った。
「ありがとう」
「おう。もう暗くなってるから、送ってく」
そう言って、ガラステーブルの上から鍵を持った。
「うん。」
なんだか、物足りない感じがして寂しかった。もっと一緒にいたかったな…この思いが顔に出ていたことが分かって、下を向いてた。「お前…寂しいなら寂しいってちゃんと俺に言えよな。」
海ちゃんは、あたしを強く抱きしめた。
「ごめん」
「俺は、友希の気持ちなんてもう分かるんだからな。気づいてないとでも思うなよ」
自慢げに話してきた。そんなあたしも、海ちゃんの気持ちはわかってないようで分かってるんだよ…
「海ちゃんも強がってるくせに。」
身体をちょと離すと、真剣な顔であたしを見ていた。あたし達は見つめあっていた。
「バレた?」
ベロを出して、てへってしてる。
「バレバレ」
真顔で言うと、
「やっぱ、お前にも分かるんだな。俺の気持ちが」
「舐めんなよ〜」
なんて、話しながら笑いあった。「よし、行くか」
手を握りしめ、部屋を出た。
階段を降りて、玄関に行くなり靴を履いた。
「お邪魔しました!」
元気よく、挨拶をするとリビングの方からお母さんの返事が聞こえた。
「ほいっ」
メットを渡され、バイクに跨った。風って、こんなに気持ち良かったっけ?生温い風が身体に触れる。こんな感じ好き…
信号が赤になるたんび、海ちゃんは後ろを向き、大丈夫か?とか、落ちんなよ?って一言声をかける。あ、また赤…だ。案の定、こっちを向く。
「しっかり持っとけよ」
「うん!」
心配症なのか?心配されることは、いい事なんだけどあたしは大丈夫。ずっとそう思う。
走らせて、およそ30分。家の前に止まった。
「送ってくれて、ありがとうね!」
淋しさを吹き飛ばすかのように、笑顔で言った。
「おう!また、明日」
去ってしまった。海ちゃんの、また明日って言葉を聞くたんびに嬉しいんだ。会えるという期待ができるから。その期待を胸に、また明日も頑張ろうって思える。
「ただいま」
あたしはリビングに一直線に向かった。
「今日のご飯はカレーよ」
テーブルを見ると、四人分のカレーが置いてあるのだ。席につき、久しぶりの四人での食事。
「いただきます!」
弟の威勢のいい声を初め、お父さん達も手を合わせていた。
「いただきます」
スプーンですくって食べた。
「ん!美味しい!」
「良かったわ〜」
お母さんは、嬉しそうだ。
ご飯を済ませ、部屋へと向かう。雑誌を手に取ってベットにゴロンとなった。
ピロリピロリ…
携帯が鳴り響いた。
「誰だ?」
開くと、
¨不在着信¨
え?誰だろ?恐る恐る、受話器ボタンを押した。
「もしもーし」
その声は、男の声だった。声の周りは、ガヤガヤしてる。
「誰なのよ、あんた」
あたしは、威嚇するように発した。
「お前、龍の幼なじみだろ」
「そうだけど、それがなにと関係してるのよ?」
そう聞くと、男は黙ってしまった。
「なんか言いなさいよ。」
「…」
「もう、切るわね」
と、言って耳元から携帯を離して切ろうとしたその時…
「今、こいつは俺が預かってる。」
不気味な笑いをした。
「はっ?どういう意味?」
「明日の朝までに来ないと、龍の命はない」
ブチ…切られた。あたしは、携帯を投げ捨て走って外へと行った。外は既に真っ暗で何も見えなかった。
「どっ、何処なのよ」
大声で名前を呼んで探したけど、勿論返事なし。あたしは、必死に辺りを見回した。もう限界…体力がなくなりその場で倒れ込んだ。
「早くしなきゃ、龍が…龍が死んじゃう」
涙がじわじわと出てくる。そのせいで、視界が見えなくなっていた。龍がよく行きそうな所…もう手段はそれしかなかった。でも、混乱してるせいか、何も思い浮かばなかった。
「あ…あっ」
諦めかけたそのとき
「海辺…海辺だ!」
あたしは、今までにないくらいもうスピードで走って行った。そう言えば、龍は何か落ち込んでる時とか、悩み事があったりするといつもあそこの場所に行くんだ。
海辺が見えてきた。
「龍…お願い。居て。」
祈るように吐いた。それは、消え入りそうな声だ。
着いた。周りを見ると、3人ぐらいの男が目に入った。
「龍!」
そこに向かって走った。龍は、こっちを見ていた。その姿は、悲惨だった。殴られた跡が顔や足にいっぱいあった。
「ようやく来たか。間に合ったようだな」
その声は、昨日電話で話していた男だった。
あたしは、怒りがこみ上げてきてその男を睨んだ。