最後のコトバ



そもそも、退院する時に1人でいること事態、おかしいことだ。

でも、だからと言って正直に話すものか。

彼も、色々あってと言葉を濁している。

彼が詳しく話さない以上は、あたしだって黙ったままでいいはずだ。



「梨華……?」



それでもなお、聞いてくるのが彼なんだ。

黙ることは許さないとでも言いたそうな、真っ直ぐな瞳。

あたしには、苦手すぎる瞳だ。



「パ……お父さんは、小さい時に病死。
お母さんは……男と出て行ってそれっきり。
だから、親はいない。頼れる親戚なんかもいない」



言葉にすればするほど、あたしは独りだと思い知らされる。

だけど、それでも平気だった。

人に触れる温もりなんて知らずにいたから。

それが、今では……。




< 61 / 83 >

この作品をシェア

pagetop