最後のコトバ
「よし。じゃあ、今日は梨華ちゃんの退院祝いだね。
ごちそう作ろう」
あたしが頷いたのを見て、はりきって皐月さんが言った。
「何を今更。最初からそのつもりである程度作っていたくせに」
「あらー、バレたか」
何気ないそのやり取りがおもしろくて、少しだけ頬が緩んだ。
その瞬間を、智史くんは見逃さなかった。
「……初めて笑った」
「え?」
その言葉に驚いたのは、あたしだった。
頬が緩んだのは自覚している。
だけど、笑ってなんかいない。
「ほんの少しだけど、笑ったよ」
首を振って否定するけど、優しく笑ってあたしをずっと見ている智史くんを見たら、もう否定どころじゃない。
だんだん恥ずかしくなってきた。