キミじゃなきゃダメなんだ


たぶん彼女は、自覚してない。

行動に出るとき、色々自分が考えてることはわかってると思うけど。

そのときの表情までは、さすがに意識しないだろう。


無意識に、人の表情を見てる。

相手が今、何を思ったのか。

それを観察してる。


その目に、僕は焼かれてしまいたいなと思う。

一生そらさないでほしい。

まっすぐな、濁りない瞳で。



そっと、心の奥底まで覗くように、彼女に見つめられたい。




「先輩は、なんでそんなに、なんでも受け入れてくれるんですか」


百合は泣きながら、そう言った。


今まで、受け入れてもらえないことの方が多かったんだろうか。


僕が百合に対して甘くなるのは、ただ単に惚れた弱味というのもある。

だけど大半は、僕に心を開いてほしいからだ。僕の前では、なんでも自由に振る舞ってほしい。


好きなように笑って、怒って、泣いて、ぐちゃぐちゃになってほしい。



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