幼馴染み~初恋物語~
体育館の一番後ろの席で、龍聖と櫻は和樹の劇を見ていた。

コントを見ているような感覚で笑いに包まれる体育館で、櫻も嬉しそうに笑っている。

「龍聖君?面白いね~?」

龍聖に話しかけた今の櫻の笑顔は、和樹と話している時のキラキラした笑顔で、自分が見たことのない表情。

そんな櫻から思わず視線を逸らした龍聖。

この時の龍聖は今まで感じた事のない感情が芽生えていた。

この笑顔を…………

俺に向けさせたい…………

和樹から、こいつの心を奪いたい…………

初めて感じた欲望は、ある意味で、龍聖の初恋だった。

劇が終わっても、櫻は幸せそうに笑って、龍聖にお礼を言う。

「今日は本当にありがとうっ!!和樹君の劇が見れて嬉しかったっ!!」

櫻は龍聖が嫉妬しているとは心にも思わず、友達として和樹の側にいるなら、何の問題もないと思っていた。

今までの恋愛にも、櫻の読む少女マンガにもない、龍聖の変な恋愛観は、全くわからなかったのだ。

すると、またいつもの意地悪なニヤリとした表情を見せる龍聖。

「いつもそうやって笑ってろ…………」

「は…………はぁ…………?」

よくわかんない…………

龍聖君が優しくしてくれたり、面白ければ笑うけど…………?

それが和樹への宣戦布告だとは、夢にも思わない櫻だった。



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