白いジャージリターンズ~先生と私と空~


「どした?」

顔を覗き込まれ、我に返る。


「ううん、なんでもないよ」


こういう返事をしても、私の心の中を見透かしているんだよね、先生。



「帰ったら話せよ」


と背中に触れた先生を愛しく思う。




来週のサッカーが憂鬱だな。

と思っていると、テーブルの上に置いていたスマホの画面が光った。


【高田コーチ】と画面に出ていた。



「育成クラスへの勧誘かな?」


先生は、画面を見てそう言った。


「またかけ直すよ」


「ああ、そうだな」



ちょっと機嫌が悪くなった先生。


なかなか本音で話せていないままで、ちょっとモヤっとする。




「直、今度またゆっくり遊ぼう。全然ゆっくり話せていなくて寂しいよ」

と久しぶりのゆかりからのお誘いに胸が躍る。

「うんうん!!」

「だって、ママ友との付き合いとか忙しそうだしさぁ」

「そんなの別だよ!!ゆかりと話さないと寂しいもん」


私達のやりとりを横目で見ていた先生の表情は、生徒を見守る教師の顔をしていた。

いつまでも、私達は心配な生徒なんだろうな。


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