残念御曹司の恋
川合大輔は優秀な秘書であったのか、父は彼を気に入って、ずっと側に置いていた。
一度は秘書室から異動になったが、その間も彼は度々父によって家に呼ばれるほど可愛がられていた。
そして、十年の月日が流れた今、彼はもう見習いなどではなく、立派な父の第一秘書を務めている。
私に向けられる笑顔は十年前と変わらなかったが、端正な顔もすらりとした体もすっかり大人の魅力を放っている。
私は彼への気持ちを一向に断ち切ることができなかった。
忘れるどころか、時を経るごとに思いは強くなる一方で。
だから、見合いの席でも、ついつい彼のことを考えてしまう。
目の前の相手を彼と比較してしまう。
愛想笑いを浮かべながら、無気力に時間を過ごすだけだ。
これではいけないと思っても、自分ではどうすることも出来なかった。
いよいよおかしいと思い始めた父に呼ばれて、原因を問いつめられる。
そこで、生まれて初めて私は本音を口にした。
父の唖然とした顔が忘れられない。
そして、父からは申し訳なさそうに告げられた。
「お前の願いは叶えてやれない」
ならば、私に出来ることはおそらく一つだけだ。
彼に、振られること。
振られて、現実を見て。
今出来る中で、一番前向きな選択をすることだ。