残念御曹司の恋
「実咲さんのお気持ちに応えることはできません。」

彼は、思いを告げた私にきっぱりと言った。
まるで、自分の役割を分かっているかのようにだ。

私は、ただ「ありがとう」とだけ言った。
振られてお礼を言うなんておかしいけれど、それは紛れもなく私の本心だった。

私に笑いかけてくれて、ありがとう。
私の本音に気づいてくれて、ありがとう。
私の背中を押してくれて、ありがとう。


私は、今度こそ本当に前向きに、縁談を受けた。


のだが、そこで今度は面白いことが起きた。
いざ気合いを入れてお見合いに臨んでみたら、今度は相手が無気力状態だった。

相手は、世界シェアで五本の指に入るような工作機械メーカー「クマザワ」の御曹司だ。
愛想良く笑って、会話もそつなく繋いでいるが、中身がまるでない。
私の事など、さして興味はないのだろう。

私は怒りが湧いてくるよりも、むしろ可笑しくて仕方がなかった。
ついこの前までの自分を見ているようだ。客観的に見ると、結構ひどい。
私は、これまでのお見合い相手に心の中で頭を下げた。
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