残念御曹司の恋
息子の竣から結婚すると報告を受けたのは、夫の突然の予言から三ヶ月が経った頃だった。
何でも、相手とはお見合いでも、仕事の関係でもなく、プライベートで知り合ったらしく。
ごくごく普通の家庭で育ったお嬢さんらしい。
「あなたの勘が当たったわね。」
「な、言ったとおりだろ?」
自信満々に笑う夫を見て、この横顔は三十年ずっと変わらないなと思う。
夫に似て、息子もやや強引なところがあるかと思うが、日頃の仕事振りを人伝に聞けば、夫に比べたらまだまだ大人しいもので、息子の方が随分と真面目な性格だと思う。
話を聞いてから、私はずっと竣のお相手に会いたかったのだが、なかなか夫の仕事の都合が付かずに、彼女を紹介してもらった時には、さらに数ヶ月が経っていた。
彼女を迎えに行って、玄関に再び顔を出した息子を急かして、やっと果たした対面は、私にとっては驚きに満ちたものだった。
背筋をぴんと伸ばして、少し緊張しながらもはきはきと自己紹介をするその姿と名前には、覚えがあった。
それは、昔から我が家に来てもらっている家政婦の仲本さんも同じようで。
思わず、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。
『お邪魔しています。あの、熊澤君のクラスメイトの片桐司紗といいます。』
十年以上前に、離れにある息子の部屋を訪ねてきていたブレザー姿の少女が、すぐに脳裏に浮かんだ。
ついでに、その少女の横で彼女への好意丸出しで頬を赤らめる息子の姿も。
「 竣って、意外と一途なのね。何だか嬉しいわ。」
その一言で通じただろうか。
息子は何でもない素振りをしているが、はっきりと目が動揺で揺
れているのが分かる。
やはり、息子は夫に比べれば、真面目で、そして純情なのだ。