極甘上司に愛されてます
照れたように俺から目を逸らす美緒だけど、その芝居がかった仕草が逆に俺を冷静にしてくれた。
……どうやら彼女は女優に向いてないらしいな。
俺が寝ている間に“そういうことがあった”ということにしたかったんだろうけど……
生憎体にも心にも、アンタを抱いた記憶はない。
記憶をなくすほど酔っていたわけでもないし、昨夜は眠くてそれどころじゃなかった。
……服を脱がされたことにすら気づかなかったんだからな。
『……そういう嘘は、自分がむなしくなるだけだぞ』
ぎし、とスプリングを弾ませてベッドから降りると、ご丁寧に床の上に綺麗に畳んであった自分の服を身に着け、帰り支度を整えていく。
『待ってよ……! “してない”証拠なんてないでしょ!? せ、責任とって!』
ベッドの上で、美緒が声を張り上げる。
“してない証拠”ね……。確かにそんなもんはどこにもないだろう。
……けど。他のものなら――あの不自然なほどすさまじい眠気の原因は、この部屋のどこかにきっと……。
無言でキッチンに近付いて行った俺は、そこに錠剤が入っていたのであろうフィルムがあるのを見つけると、それを手に取った。
……捨てとけよな、こういう怪しい物は。
『これは何の薬だ?』
『……! か、風邪薬よ』
明らかに視線を泳がせて答えた美緒。
その様子はこれ以上責めるのが可哀想になるくらいだが、俺は彼女の目の前まで行って布団の上にフィルムを放ると、低い声で言った。
『……そんな嘘は通用しねぇ。知り合いに同じものを使ってるヤツが居るんだ。これ、眠剤だろ?』