極甘上司に愛されてます
言葉を失う美緒の姿に、俺は静かにため息をつく。
予想していたとはいえ、まさか本当にそうだったとは……
『……間違って俺が死んだらどうするつもりだったんだよ。酒の入ったところにこういう薬はマズいだろ』
『……わかってた、けど……どうしても、あなたに助けて欲しかったから……』
『寝たことにして、責任とってもらおうって?』
『……それしか、方法が……!』
そこまでするほど精神的に追いつめられていて、昨日初めて会った俺にすがってしまうほど周囲に頼る人がいないことには同情する。
でも、これから母親になる女のすることじゃないだろう。
『嘘が下手すぎるアンタには、向かない計画だったみたいだな』
『……放っておいて』
『……ああ、もう帰る。……最後にこれだけ言っておくけどな。知り合いにあの薬を使ってる人なんていない』
『え……ま、まさか』
俺のハッタリにまんまと引っかかったことにようやく気付いたらしい彼女が表情を歪める。
『……嘘っつーのはそうやってつくもんだ。言ってて自分が傷つくような嘘はもうやめとけよ? ……腹ん中の子だって聞いてる』
ぎゅ、と布団を握る手に力がこもり、観念したようにうつむいた美緒。
俺は胸ポケットから名刺を取り出して、テーブルの上に置くと言った。
『困ったことがあったら相談くらいには乗る。……“友人として”でいいならな』
おそらくそれでは彼女の助けにはならないのだろう。
美緒は少しもこちらを向こうとせず、俺はそのまま彼女の部屋を去った。