極甘上司に愛されてます
『くそ……無理やりにでも一緒に行くんだったな』
思わず本心をこぼして、スマホを片手にどう返信しようかと悩んだが、佐藤に対して嫉妬丸出しの文章になりそうだったので、無視を決め込むことにした。
……それより、カップ麺の後処理だ。
ふうと息をつくと、さっき汚してしまった写真をもう一度手に取って、眺める。
あー、このワケのわからない絵は、アレか。
例の北見が逆に載せた、小林風人の作品のうちのひとつ。
……何度見ても、俺には理解しがたい絵だ。
今後使う予定もないし、汚れてしまったし、もう捨てても構わないだろう。
俺はそう思い、写真を足元のゴミ箱に落とそうとする。
……けれどふいに何かが心に引っ掛かり、俺は再び手の中の写真をじっと見る。
『このサイン……』
絵の端に書かれた小さな文字は、美緒の部屋で見た絵に記されていたものと、全く同じ。
そして美緒の語った“彼”は確かに、小林風人の人格に当てはまる。
……そう、か。父親は、あの女好きの画家だったのか……
腹の子の父親がわかったなら、どうにか二人を話し合わせたい。
お節介かもしれないが、乗りかかった船だ。美緒がどれだけ苦しんでいるか、あの奔放な画家にわからせてやらねぇと……
そう思い立ったのはよかったが、俺には彼女への連絡手段がないことに気付いて、いきなり船は暗礁に乗り上げた。
……そうだった。こっちの名刺を渡したはいいが、美緒の連絡先は知らない……
また店に行けば会えるんだろうが、一人であそこに行くのはさすがにな……