極甘上司に愛されてます
腕を組みしばらく悩んでいると、編集部員の一人が俺のデスクの方に近づいてきて、俺に言う。
『お客様が見えてます』
………客?。そんな予定はなかったはずだが。
不思議に思いながら編集部の入り口に視線を移動させると、今まさに連絡を取りたいと思っていた彼女の姿がそこにはあった。
――美緒。
俺は写真を持ったままですぐに席を立ち、二人きりで話ができるよう彼女を応接室へと通した。
『……仕事場にまで押しかけてごめんなさい。でも、話があって』
『いや……俺も、アンタに話が合ったからちょうどいい』
『何?』
テーブルを挟んで向こう側のソファに座っている彼女は、よくないことを言われると予期したかのように体を強張らせる。
『お腹の子の父親だけどな……画家の、小林風人なんだろ?』
『……! どうして……』
『あの人は、この辺出身の有名人の中でも一番と言っていいほど名が知れてるからな。うちでも取材したことがあるんだ』
スッとテーブルの上を滑らせるように置いた写真。
美緒はそれを見て微かに眉根を寄せたあと、顔を上げて俺を見た。
『……父親が誰であろうと、関係ない。今日は改めて、あなたに交際を申し込みに来たの』
『交際って……何言ってんだ』
『この間のこと……迷惑を掛けて申し訳ないと思ってる。でも、今度は嘘じゃないの。あの時に優しくしてくれたあなたのこと、本当に好きになったの!』
……そうやって、意地みたいに“好き”だと言われてもな。
俺はため息をついて、写真を胸ポケットにしまう。