極甘上司に愛されてます
『……たとえ本気だとしても、その気持ちには応えられない』
『どうして……? 付き合ってる人がいるの?』
『…………いや』
今ここで社内の人間と付き合っているなんて口にしたら、今の美緒はオフィスに乗り込んで行って誰なのかつきとめかねない。
そんな騒ぎが専務の耳にでも入ったら、北見を悲しませることにつながる。
ここは、適当にかわすしか……
『そういう相手がいるわけじゃないが……』
『……だったら!』
『……話、それだけなら仕事に戻る』
無理矢理に話を中断させて応接室を出ると、仕方なくついてきた美緒は俺を見上げ、こんな妥協案を提案する。
『今は気持ちがなくても……ためしに付き合ってみるっていうのはどう?』
……廊下に出てまでそんな話をするか。
俺は周囲を窺いつつ、誰に聞かれても構わないよう他人行儀に言った。
『……何度言われても、答えは同じです』
悔しそうに下唇をきゅっと噛んだ美緒だけれど、挑戦的な瞳で俺を見据えた。
『……それでも、また来ます』
……今は何を言っても無駄なようだ。いい加減彼女の執念深さには付き合いきれない。
俺は強制的に会話を終わらせようと廊下を歩く足を速める。