極甘上司に愛されてます
「会社に飾るんですか?」
「違ぇよ。それはお前に」
サラッと言って、シートベルトを締める編集長。
この花を……私に?
「え……えぇぇ!?」
男の人からお花をもらうなんて初めて!
……って、またコレ、仕事絡みの変なシュミレーション?
そうだとしたら、動揺し損だけど……
「まぁ、アレだ……騒がせ賃、とでも言えばいいのか」
「騒がせ賃……?」
「……“婚約者”の件」
「……ああ! でも私、本当に気にしてないのに……」
こちらこそ、編集長のプライベートを勝手に覗き見てしまったような気がして申し訳ないというかなんというか。
そんな複雑な気持ちで花束を握る私を一瞥した編集長は、前に向き直って車を発進させるとぼそりと言う。
「気にしてない……っつーのもな」
「え?」
「……いや、独り言」
今日の編集長はやっぱりどこか変だ。
このお花、本当は留美さんに贈りたいのにそうできないから、とりあえず手近にいる私にくれたのかな……
そう思うと、ハンドルを握る横顔にまたしても大人の哀愁みたいなものを感じてしまって、どきりとする。
編集長に、留美さんを忘れさせてくれるくらいのいい出会いがあればいいのにな……
社内の女子で彼と同年代といえば理恵さんくらいだけど、彼女は既婚者だし。