俺様富豪と甘く危険な恋
自分もビールに濡れてしまった栞南だが、ジェシカの泣きそうな顔を見て、胸がスカッとしたのも否めない。

でもジェシカはすぐに顔がひきつらせた。怒りが込み上げてきたようだ。

キッと栞南をにらみ、文句を言おうと口を開いたところで、ダニエルがタオルを数枚持ってやってきた。

特に急ぐ様子でもない。やってくると栞南に申し訳なさそうにタオルを手渡し、ジェシカには膝の上に置く。


「申し訳ございません。先ほど床に落としてしまったビールだったようです。商品は大丈夫ですか?」


ダニエルはまだビニールに包まれたブランドバッグに視線を向ける。


「……まだ出していなかったから大丈夫です」


ジェシカはダニエルに表情を和らげる。

栞南はビールで濡れた髪の毛を拭きながらこみあげてくる笑いを堪えるのに必死だった。


(ダニエルさん、わざとやったんだ。でも私がプルトップを開けることになっちゃって……)


タオルを渡された時のダニエルの申し訳なさそうな顔を思い出していると、蓮がやってきた。


「どうしたんだ!?」
「どうしたの?」


ジェシカの悲鳴は書斎にいる蓮に聞こえなかったようだが、シャワーを浴びたばかりのソフィアは階段を駆け下りてきた。

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