キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「……それで、何があったんだよ」
「え?」
「朝、俺には話したくないのかと思って追及しなかったけど、お前最近おかしいぞ。ほとんどしなくなっていたような初歩的なミスが多い」
朝……加工を教えてもらったときに、『最近何かあったのか』と聞いてくれたことだよね。
「ごめんなさい」
「ミスを責めてるわけじゃない。店の事で問題があるなら、教えてほしいだけだ。俺は店長だから、店に問題があるなら、把握しておかなきゃならない」
そういう店長の横顔は、いつもの仕事の鬼だった。
なんだ……やっぱりお店のためなのね。
私を送ってきてくれたのも、それを聞きだすため。
そう思うと、少し胸が痛かった。
「大事にはしたくないんですけど……」
私はとうとう、ぽつぽつと妖怪セクハラおやじ……もとい、杉田さんのことを話した。
そのことで、平尾さんにますます良く思われなくなったことも。
「そういうことか」
話を聞き終えたとき、店長の車はちょうどうちのアパートの前に着いた。
エンジンを切った暗い車内で、店長がタバコを取りだす。
「一本いいか」
「はい、どうぞ」
「すまん。イラついてな」
取りだしたジッポのライターで火をつけると、煙を吸って吐き出す。
独特のにおいと白い煙が、店長の周りに漂った。