愛のカタチ
目の前には、今にも風で吹き飛ばされそうなプレハブの建物が見える。
入り口には、『吹奏楽部』と墨で書かれた看板が立て掛けてある。
「懐かしい……」
思わず、口から漏れた。
三年間、仲間と過ごした場所。
パート練習のときも、全体練習のときも、いつもこの窓から目で追っていた……
賢司のことを。
吸い込まれるように駆け寄り、中を覗いてみたけれど、真っ暗で何も見えない。
辛うじて、パーカッションのドラムやティンパニがうっすらと見える。
――と、背後に感じる人の気配。
「懐かしいだろう?」
と、頭に乗せられた掌に、またしても、心臓が飛び跳ねる。
気付かれないように、小さく頷いた。