霧雨が降る森
(天国で、お父さんはお母さんに会えたのかな。あってそれから、二人でなにをしているんだろう。少しは僕のこと、思い出してくれるかな。さみしいと思ってくれるかな。……会いたいよ。もう一度、お父さんとお母さんに……)





「……お母さん、どこー?どこにいるのー?……一人ぼっちはやだよぉ」






返事の代わりに聞こえるのは森のざわめきだけ。少年はぐずぐずと洟をすすった。


ー孝太郎、また泣いて。お前のほうが女の子みたいだなぁ。


ーまったく、少しはシオリちゃんを見習わないとな。あの子はこの程度で泣いたりしないだろう。……いつまでもそんな調子じゃ、あの子に嫌われてしまうぞ?




耳の奥に甦るのは父親の声。





少年は雨でじっとりと濡れた袖で、涙をぬぐった。





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