手を繋いで-Pure love-
 一人の女性が、キョロキョロして立っている。
 彼女はどこか蒼に似ていて。

 懐かしい匂いがした気がした。



 でも、彼女は俺に気づかない。


 視界に俺は入っている筈なのに。
 目の前にいるのに。


 まだまだ電車は来ない。
 ホームにいる人の数も少ない。

 探す必要なんて、ないはずなのに。



「優生、なの?どこ…?」



 でも、不意に呼ばれた俺の名前。



「蒼…?」



 呼び返す、あの名前。




 やっと、見つけた。




 脳内にそんな言葉が浮かぶ。
 でも、声にはならない。


 声にならない代わりに、おれは彼女を抱きしめた。



「蒼、蒼…っ!」

「優生、だよね?っ、会いたかった…」



 大人になっていた。

 子どもの頃とはちがう。
 伸びた髪、伸びた身長。

 
 幼かった顔つきも、少し大人っぽく可愛くなっている。



「俺だよ、蒼…!」



 やっと、会えた。
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