手を繋いで-Pure love-
「大丈夫か?」

「うん、ありがとう。」



 目を閉じていてわかりにくいけど、
 腫れているであろう目を冷やさせるために濡れたタオルを渡した。

 涙の理由はとても気になった。


 だけど…
 母さんが泣くほどの理由だ。

 俺は、正直…聞くのが怖かった。



「あのね、優生。」

「ん?」


「…私のこの目は、事故だよ。」



 事故。
 それを聞いて強ばった体が少し楽になる。

 もっと嫌なことを想像してしまっていた。



「治すために手術もした。傷も残らず綺麗に治せた。
 視力だけを覗いて、だけど。」

「視力…」

「そう、視力。
 手術はしたけど、私の心が…治るのを拒んでるんだ…」



 心?

 再び体が強ばる。
 嫌な予感がして仕方がない。



「手術をしたら、治るんだよ。
 だけど…私は目の前の現実を見たくないっていう心のせいで…私の世界、暗闇になっちゃった…」



 そう言って、蒼は涙を流した。



「優生の顔、見たい。ほんとに心から思う。
 だけど…私の心はそれだけじゃ治らないみたい。」

「何だよ、心って…」



 聞くのが怖い。
 だけど、聞かないと。

 そう囁かれてる気がした。


 けど蒼の言葉を聞いてすぐに、聞いたことを後悔した。



「私のお母さん…お父さんからDVを受けてたの…」

「えっ…、」



 それは息がつまりそうなほど、信じ難い真実だった。
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