咲かない花
4月の新年度になり、私は1年A組の副担任になった。
私の場合、担当教科が美術ということもあってか、いつも1年か2年の副担任をしている。
というか、三笠(みかさ)学園でも、前勤めていた公立高校でも、私はまだ、副担任しかしたことがない。

1Aの担任は三宅先生。
私より2つ年上の36歳、既婚。
学園内では仲良くしている方で、時々飲みに行くこともある。
もちろん、二人だけで行ったことは一度もないし、今後もそれはないはずだ。
なんてったって、三宅さんは子煩悩で奥さんラブな人だから、飲みに行っても我が子の自慢と、どれだけ奥さんのことが好きなのかという惚気を聞かされてばかりだし。
三宅さんの担当教科は、於保(おほ)先生と同じ数学だ。
於保さんは3年担当になると思っていたけど、1年B組の担任になった。

二宮くんは、1年C組の副担任になった。
5年目にして、初めて担当学年が同じになったことに、ドキッとする。
それで職員室の席は近くなったものの、列が同じで隣の隣。
私たちの間には、大柄な武田先生がデンと腰かけているため、座っているとお互いの姿が見えることはまずないことに、ホッとした。

だけど1Cの担任が長尾先生であることに、東内さんはかなりご立腹だ。
東内さんと長尾さんは、犬猿の仲というか・・・。
人のあら探しばかりして、誰とでも仲良くするより議論したがる長尾さんと、教師の間でも深く関わりたいと思う人はいないから、その点は、二宮くんが気の毒だと思う。

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