猫の恩返し
あの時、どこに被疑者が居るのか分からなかった

なだれ込んできたすべての人間が、制服姿だったから…

それはつまり───


被疑者が警察官


そんなバカなこと、あるはずがないと思っていた

いや…そう思いたかっただけなのかもしれない

賑やかだった受付前も、集団が通り過ぎ静けさを取り戻すと、皆何事もなかったかのように仕事に戻った


俺達には関係のないこと…

そう…

溝口に会うまでは───


「そっか…。お前の後輩だっけ…」


「………」


「可愛がってたヤツだもんな」


「………」


「お前は悪くないよ」


「………」


───覚せい剤取締法違反(使用・所持)


溝口の後輩の尿から覚せい剤の反応が出て、現行犯逮捕

家宅捜索の結果…部屋からも覚せい剤が見つかったらしい

ふさぎ込む溝口の姿を思い出す


自分がもっと傍に居てやったら…

もっと話を聞いてやっていれば…


後悔しても仕方がないのに、いつまでも自分を責めている溝口は見るに堪えなかった
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