麗雪神話~炎の美青年~
褐色の肌と頭に巻いたターバンで、この国の人間だということはわかる。だがこんな危険な場面に躍り出てくるとは、なんと命知らずな…。

そう思ったが、続く男の反撃を見ると、セレイアは何も言葉が出てこなかった。その動きが豪快でありながら洗練されていたからだ。

相当な力をこめて、湾曲刀を横なぎになぐ。

剣は効かないはずのムカデが、その攻撃で深手を負い、ギュアアと悲鳴のような声をあげた。

強い…!

驚きから思わず彼の戦いに見入っていると、もう一人の人影がさっと目の前に現れた。

今度はうら若く美しい女性だ。

それも北の地方の人間だろう。

真っ白な肌に、色素の薄い金糸のごとき長い髪をしている。

彼女は手に細剣を持ち、男と連携してムカデと戦い始めた。

思わぬ助太刀に、セレイアもディセルも呆然とする。

現れた二人はムカデを翻弄した。

そしてあれよあれよと言う間に決着はついた。

男がムカデを引き付けている隙に、女が跳び上がり、ムカデの脳天を細剣で突き刺したのだ。

ムカデは霧散し、あたりには男が守った子供の泣き声だけが響き渡る。
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