麗雪神話~炎の美青年~
カティリナが無表情で無言のまま、空になったアル=ハルのジョッキに酒をつぎたす。

それをアル=ハルはまたしても一気に飲み干した。

―二杯目。

セレイアはなんだかどぎまぎしてしまう。

こんな朝からそんなに飲んで、大丈夫なんだろうかと。

そんなセレイアの心配をよそに、アル=ハルは涼しい顔をしている。

「見ず知らずの人々のために自ら霧に突っ込んでいく、武人の魂に感激しました」

「まあアル=ハル様。それは私の方です。子供を守って戦われた雄姿には感激しましたよ。真の武人というか!」

頬をわずかに紅潮させ、勢い込んでセレイアが言うと、アル=ハルは朗らかに笑った。

「真の武人を語ってくださるか。いいね、頼もしい御嬢さんだ」

「え、えと、ありがとうございます」

このやりとりに、隣に座っていたディセルが急にそわそわしだした。

「アル=ハル殿はご結婚されているんですか?」

なぜか急にそんなことを尋ねる。

はは~んと意味ありげな流し目をディセルに送り、アル=ハルは答えた。

「しているよ。いや、していた、と言った方がいいかな。妻はもう何年も前に亡くなったので」

「そ、そうでしたか…ってことは恋敵になりうるよな?」

ディセルはぶつぶつ言いながら、ばつが悪そうな、それでいて何かを危ぶむような表情になった。
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