麗雪神話~炎の美青年~
呆然として、セレイアもディセルも立ち尽くすことしかできない。

神業を目の前にしたのだから無理もない。

だが、それが悪かった。

それが油断だったのだ。

吟遊詩人が竪琴を置いて腕を伸ばすのを、二人はただ眺めているしかできなかった。

腕を伸ばした先にブレイズがいることに気づいたのは、もう手遅れになってからだった。

ブレイズは吟遊詩人によって強く体を押され、…

足場からマグマの海へ、突き落とされたのだから!!

あまりといえばあまりの、突然の行動。

「ブレイズさん!!」

セレイアの悲鳴が轟くのと、ディセルが何事かとなえるのが同時だった。

「わぁぁぁ―!」

落下していくブレイズの体。

「いやああぁぁぁ!」

セレイアは腕を伸ばす。到底届かないとわかっていても、そうせずにいられなかった。
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