SONG 〜失われた記憶〜
チリーン。

店の古びた鈴が鳴り、
視線をそちらに向ける。

「え…」
「あ、
栗山さん!
こっち!」

そこには昨日あったばかりの義人さんがいて、
綾那が大きく手を振り、
合図する。

「ごめんね、
遅くなって…」
「いえ…」
「私が呼んだの」

だと思った。

彼の連絡先を知っているのは、
綾那くらいだ。

「義人さん、
何か飲む?」
「ああ、
……梅酒ある?」
「あ、
私貰ってくる」

綾那は素早く圭一さんの元へ行き、
お酒を作ってもらっている。

流石マネージャー。

「新曲出来たんだって?
綾那ちゃんから聞いた」
「うん。
あの後なんとかね」
「そっか、
良かったじゃん」

彼は私の隣に腰掛け、
小さな子供をあやすように優しく頭を撫でてくれた。

昔は彼にされるこの好意が嬉しかったが、
今はあまり好きではない。

子供扱いされているようで嫌だ。


きっと彼の瞳に映る私は、
ハル兄と一緒に遊んでいた頃の幼いままの私で一人の女性としては、
見てくれていないのだと思う。





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