SONG 〜失われた記憶〜
「……二十歳かあ」
「ん?」
「あの日のハル兄と一緒の歳になっちゃった」
「……」
「私、
時々怖くなる。
もしハル兄が目、
覚まして私のことやパパとママのこと、
みんなのこと忘れちゃったらどうしようって」
「詩ちゃん…」
「前はそんなこと思うことなかったのに、
最近よく考えちゃう。
なんでかな」

私は俯きがちに、
グラスに注がれた液体を見つめながら言った。

義人さんは何も言わない。

ただ優しく頭を撫でてくれるだけ。


それだけでよかった。

変な慰め言葉よりもずっと、
心地よい。

「……クシュンッ」

肌寒くなり、
くしゃみが出た。

夏とはいえ、
流石に夜はまだ少し冷える。


しかも私の今の格好は、
キャミソールワンピ一枚。

そりゃ寒くもなる。




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