SONG 〜失われた記憶〜
数回、
私たちと言葉を交わした後ルイは、
フラフラどこかへ消えて行った。

やはりよくわからない。

掴めない男だ。








Pipipipi...

私のスマホがカウンターの上で、
ブルブルと振動した。


ディスプレイを確認すると、
今はウィーンに滞在して日本にいないはずのパパの名前が表示されている。


珍しい。

「はい、
もしもし」
《ああ、
詩か?
父さんだ》
「わかってるって。
どうしたの?」
《今、
帰って来てるんだ。

いつもどる?
母さんが煩くてかなわん》
「もう、
帰ってきているんなら前もって連絡してよ。

……今圭一さんとこで皆んなと飲んでるの。
遅くなるけどそっち帰るよ」
《そうか。
わかった。
気をつけるんだぞ?》
「平気だって。
もう子供じゃないんだから」

電話を切り、
私は深くため息をついた。

両親が帰ってきたことは、
喜ばしいことなのだがまた煩くなる。


海外にいる時は全くと言っていいほど、
連絡を寄越さない癖に日本に帰ってきた途端、
毎日のように電話してくる。

向こうは休暇だから暇なのかもしれないが、
こっちは仕事しているのだ。

少しは遠慮してほしい。










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