……っぽい。
エレベーターで3階まで上り、部屋の前まで着くと、私は震える指でなんとかバッグの底から鍵を取り出し、笠松に預けた。
笠松は、私が部屋の中が見えないように壁に寄りかかったのを確認すると、こくりと頷く。
今からミッションします、という合図だ。
私も頷き返すと、にわかに緊張した表情の笠松が、いよいよ鍵穴に鍵を差し込む。
数秒後、ガチャリ、という無機質な音が静かな廊下に響き、ゆっくりとドアが開けられた。
「……先輩、ここ、先輩の部屋ですよね?」
中を覗いた笠松がドアを開けた格好のまま、やっとそれだけを絞り出すように言葉を発する。
やっぱり、まだいるんだ……。
確証はなかった。
けれど、笠松の驚きようから察するに、私の彼氏以外の“誰か”がこの部屋にいることは間違いなさそうであり、どうやら私は、本気で帰る部屋を失ってしまったことは明らからしい。
「中、どうなってる?」と笠松に確認する私の声は自分でも驚くほど淡々としていて、事務的で機械的な聞き方になっていた。
「……先輩の靴でないなら、女物のハイヒールが転がってます。それと革靴が。先輩、確か彼氏がいるはずじゃ……。なんなんすかコレ」