……っぽい。
「海月だって産めるよ」
すると、私の気持ちを察したのか、私の腕から拓人くんを抱き上げ、今度こそ保育士さんに預けながら、しほりが事もなげに言った。
それがあんまり優しい声だったから、普段とのギャップにしばしキョトンとしてしまったけれど、そんな私に笑いかけると、彼女は課に戻る廊下を一緒に歩きながら静かに語るのだ。
「私はさ、何も面白いから笠松君とどうこうなれって言ってるんじゃないんだよ。たまには想われる幸せを感じてほしいの」
「想われる、幸せ……」
「うん。旦那に告白されるまでは、私も海月みたいに自分から好きになった人とばっかりつき合ってきたけど、結婚したのは、こんな私を一途に想ってくれた旦那。おかげで拓人も産めたし、3人での穏やかな幸せがすごく心地いい」
「うん」
「だから海月も、想われる恋から逃げないでほしいんだ。色々あった今の海月には怖いことかもしれないけど、私はそう言っておくよ」
最後をそう締めくくったしほりは、廊下の先に『鶴亀課』のプレートを発見して「じゃ、またね」と言うと、ちょうど課から出てきた旦那さん--辻岡誠治さんの姿もついでに見つけ、幸せそうに笑って廊下をかけていった。