……っぽい。
 
でも。

カグからあの頃の俺の様子を聞いて、不思議と胸にストンと降りるようなものがあった。


俺にとって千晶は、全てが“初めて”の相手。

つき合うのも、手を繋ぐのも、デートも、キスも体を重ねるのも全部千晶が初めての相手だったから、千晶が望むようにするのが一番いいと思っていたし、そうすることで千晶が幸せそうに笑ってくれるなら、それが俺の幸せだった。


依存……だったのだろうと思う。

カグは、遠慮やお世辞のいらない間柄だからこそ、千晶を“強かな雌豹”と評して、俺を“千晶に流されている”と言ったわけだけれど、たぶんカグの言う通りなのだろうと、今は思う。

千晶に抱いていた“守らなくては”という、ある意味使命感のような気持ちと、先輩に抱く“守ってあげたい”という純粋な欲求と。

こんなにも、気持ちが違う。


千晶のことは好きだった、とても、とっても。

だから長くつき合えていたし、千晶のほうから持ち掛けられた同棲の提案にも躊躇いなく頷けたし、次は結婚だと本気で考えた。

それでも先輩は、いつの間にか、守ってあげたい可愛い珍獣として俺の心の中にいて、その身も心も削るような危なっかしい尽くし方から、ちっとも目が離せなくなっていたのだ。
 
< 166 / 349 >

この作品をシェア

pagetop